iPhone7のA10チップもデュアルコアに―性能はSnapdragon820を圧倒 ~ iPhone Mania
iPhone7に搭載されるA10プロセッサは、これまでの「A~」シリーズと同様、引き続きデュアルコア(2コア)が維持される公算が高いようです。
まあ・・・なんだ。
iPhone Maniaのこの記事のタイトルの「A10はSnapdragon 820を圧倒」の部分。
事実はまだわかりませんが、現状出ている情報を見てもまあそれを記事にするのは有りでしょう。
確かにA10がすげー性能が上がるみたいなことは言っていたような気がします。
ただ・・・なにこれ?

赤の四角で囲みましたが、「デュアルコアでもSnapdragon820を圧倒!」と銘打っているのはいいとして、
その下に何故かシングルコアでのスコアを上げています。
デュアルコア自慢をしてたんじゃないの?デュアルコアが確定してシングルコアのグラフを提示するなら、同じAプロセッサ同士の
比較記事を書けばいいじゃないですか。なんでAプロセッサのシングルコアのグラフを
出した上で「デュアルコアでもSnapdragon820を圧倒!」なんでしょうか。
別にその項目を掲げること自体はいいと思いますけど、訳の分からないデータの使い方を
してそう書くのはどうなんだよと言いたくなります。
で・・・、今さらコア数を性能の指標とする記事を書いているのを見てちょっと驚いています。
(というかデュアルコアであることをちょっと残念がっているように感じました)
そりゃ過去にはAndroid端末の宣伝などでデュアルコアやクアッドコアを謳った時代は有ります。
オクタコアまでそれは続きましたが、そこで一旦終わっています。
なぜデュアルやクアッドコアで性能向上を謳えたかというと、コア自体が同じもの、あるいは似た
ような性能だったこと。または後のコアの方が性能向上されていることが分かっていたからです。
なのでコア数が多い=性能が間違いなく向上しているということが約束されていました。
同じCortex-A9のデュアルコアとクアッドコアならクアッドコアの方が高いのは明確ですよね。
ではA9やA10等のアップルAプロセッサとSnapdragon 810/820等のオクタコア・クアッドコアの
場合は単一コア同士で全く同じ比較をしていいのか?
全く「ノー」ですよね。
誰でもわかることです。
アップルのAプロセッサは単一コアの性能を上げることで性能向上を目指してきました。
一方Snapdragonはコアの性能向上も有りましたが、毎回でもありません。
コア数の増加とのバランスで性能向上をしてきました。
それもARMのCortexとクアルコムのカスタムコアを使い分けての成長です。
そういった全く性格の違うものを文面では総合力のように見せかけておきながら、
グラフでは単一コアの性能を表示。
まあ全部アップルのAプロセッサのグラフなので特段アンフェアな比較をしているわけ
ではありませんが、ちょっと誤解を誘いたいのかな?とか勘ぐってしまう表示ですね。
で、iPhone Maniaの記事の終わりにこんな記述が。
性能はGeekBenchで3,000点を優に上回る数値だそうです。iPad Pro12.9インチ版に搭載されている「A9X」チップの3,200点には及びませんが、A9プロセッサや、Android端末に搭載されているSnapdragon820が2,500点少々であったことを思えば、かなりの高点数であることが分かります。
何故かプロセッサ総合の性能ではなく、コア当たりの性能比較になっています。
実際の数字を見てみますと、
●
iPad Pro(A9X) シングルコア:3243 総合:5500
●
samsung SM-N935F(Exynos 8893) シングルコア:2161 総合:8280
●
samsung SM-G9350(Snapdragon 820) シングルコア:2320 総合:5354
●
samsung Galaxy S7 Edge(Exynos 8890) シングルコア:2220 総合:7465
A10のシングルコアが3000を超えるとのことですが・・・よくわからんので、A9Xの3200レベルと同等としましょう。
それだと総合でもSnapdragon 820をやっと超えるぐらい。(iPhone Maniaさん、記事のタイトルヤバくないっすかー?)
現行のGalaxy S7世代のExynos 8890には全く届かず、S8世代のExynos 8893には遠く及ばない。
あえて言おう!カスであると!とまでは言いませんが・・・もしA10が単コアで3000クラスというでしたら自慢するほどでもないのでは?
Exynosに対抗するつもりなら私はもっと単コアの数字を伸ばしてくると思いますけどね。
もしこの記事の通り伸ばせなかったらそれこそiPhone 6s世代を買った人が大当たりだったとしか言えません。
最低でも単コア3500は出してこないとExynosとの競争はできません。
いや、4000はないと話にならないか。
「iPhoneは性能を追う端末じゃないです」
ああそうですか、こりゃこりゃ。
鉄板の言い訳が有りましたね。
というか、アップルが68系、PowerPCで通ってきた道のような気がしますけど・・・。
私が思うに基本的にコアはクアッドコアぐらいが一番バランスがいいと思います。
オクタにするなら4x4で同時に動くコアは4コアまで。
Cortex-A7やA53等の省電力で発熱の少ないコアならオクタコアでも問題ないと思いますけど。
ただコア数をいたずらに増やしてもロードバランサーが複雑化するだけと思うのです。
私がXperiaアンバサダーでXperia Z4/Z5やXPを借りて使っていた時もそれは感じました。
色んな状況で延々とCPU-Zでロードバランスを眺めているのですが、どうも810を搭載した
Z4やZ5ではロードバランスが変。見ていても負荷がかかっているのが今ひとつピンとこない。
しかしXPではロードバランスを確認していたらきちんと仕事をしているのが分かりました。
恐らくZ4/Z5よりもXPの性能が高いのは、このロードバランスの良さも影響しているのかも
しれません。実は810は本気の実力を出せば820に匹敵するか、それ以上の性能を出す結果を
私は見つけてしまっています。そんな性能出せるほど冷やせる筐体は有りませんけどね。
何にしてもA7/A8でアップルが他社が準備をしてこなかった64bit化のねじをさっさと巻いてしまった
おかげでそれまでの他社を64bitコアでは出遅れさせることでの時間稼ぎが今の生命線です。
その間にどれだけ逃げるのかがアップルの手口。
まあクアルコムもARMもそうは簡単に逃がしてくれませんよ。
で、コア当たりの性能に関してもう一度整理しておきます。
アップルは一コア当たりの性能を稼ぐ方式。
これはマルチスレッドのプログラムを効率的に組めないへちょいプログラマーでもそこそこの
性能を叩き出すアプリを作れるというアップルのやさしさもあると思います。
一方で多コア化を進めるプロセッサではスーパーマルチスレッドなプログラムを組めばがっつり
処理が高速化します。ただそれだけだと万能とは言えない。
各コアが動くと必ずメモリへのアクセスが起こります。
2コアでメモリにアクセスするのと、8コアでメモリにアクセスするのでは、8コアの方がバスの
コリジョンが激しくなりやすいという欠点が有ります。
その手前でファースト、セカンド、サードのキャッシュがコリジョン阻止をしてくれていますが、
広大なメモリ空間へのアクセスが8つのプロセッサで起こるとばらばらのアクセスが一斉にやってきます。
そういったコアごとにメモリアクセスを散らさないテクニックを駆使して組むと、オクタコアは恐ろしい性能を
発揮する一方、コリジョンやらアドレス散らしが入ると思ったほどでも無くなるという・・・。
まあコアを細かく分散化すればいいというわけでもないという問題色々。
そういう意味ではアップルのデュアルコア作戦は悪くは有りませんが、しかしながらビックコアも
これまた無駄を生む理由をはらんでいます。
その基本的な理由だけ触っておきます。
コアが大きくなるとどうしても回路規模が大きくなり、何をするにもバスや回路長が長くなります。
同じ幅の電線に電力を通す時、1cmの線と2cmの線では明らかに1cmの方が少ない電力で
一定の電圧が行きわたりますね。
アップルAプロセッサのように一コアを高性能化すると、この問題にぶち当たるのです。
回路規模が大きくなることによって、線長が伸び、線の端まで電圧を行きわたらせるのに
多くの電力を食い、しかも電圧を行きわたらせるのに時間が余計にかかり、線長が伸びた上に
bit数が多くなるとB0~B63迄の反射やエコー、信号が到達する時間差が問題になります。
つまりコアを大きくすることによって、電力を食い、高クロック化には向かないコアとなるのです。
勿論回路規模が大きくなるとより熱を発しますが、それは多コア化しても同様の問題が有るので割愛。
この辺りのバランスを見ていくと、私は4コアぐらいが妥当なんじゃないの?
って気がしています。
ここまで見ると、コア数が多いのがいいわけでもなく、少ないのがいいわけでもない。
そういうことが分かりますよね。
もし上に書いたようにA10の単コアが3000越えの辺りで足踏みをするというのが正しいのなら、
この問題で性能向上にブレーキがかかっているのではないかなと。
車のエンジンでいうと2気筒か、4気筒か、8気筒か。
レース用のエンジンだと12気筒とかもありますね。
フェラーリなんかは市販モデル自体が12気筒だったり8気筒だったりしますけど。
これも気筒サイズを燃焼効率や車体に収めるサイズを考えて気筒数を決めています。
気筒サイズが小さいとトルクが稼げず、その割にはフリクションロスが増えて効率の悪いエンジンとなります。
また燃焼効率も気筒サイズに影響され、大きければトルクは出るものの、混合気の燃焼速度は決まって
いますし、吸排気時に動く空気の速度も一定以上は出ませんので、気筒サイズにも限界が有ります。
8000cc一気筒なんてエンジンが実在しても、その理由で回転数を上げられないことが予想できますよね。
まあその気筒を実現するために見合う強度を作るととんでもなく大きく重くなりそうですし。
レシプロエンジンとしてはあまり実用的とは言えません。
プロセッサもそういうことです。
消費電力と目標クロックを考えてコアの規模を決めることになります。
コア数が多いからいい、巨大だからいい、そんな単純な話ではありません。
何事もバランスです。
で、こんな感じで決まっているコア当たりの性能はプロセッサごとに全く違うことぐらい誰でも
予想できるだろうと思います。
プロセッサの総合力を語る時は単コアの性能を示し、その積み上げで語るのはいいと思います。
しかし、単コア当たりのグラフを示し、その解説もせずにプロセッサの総合性能っぽく見せかけるのはどうかなと。
iPhone Maniaにはきちんと技術が分かる人がいないのかなと思う記事だったりします。
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- 2016/07/14(木) 23:43:29|
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(峠の)下りを制する鍵はパワーよりもトータルバランス。
(峠の)上りを制する鍵はトラクションがすべて。
下りでパワーがありすぎると扱いにくい車となり、速く走る目的を妨げる。
上りでトラクションが無いと車体をグイグイ引っ張りあげることができず速く走る目的を妨げる。
CPUでもパワーだけあげることは、あまり意味が無い。
Pentium4の悪夢を見てもそれは明確。回転数を上げやすくする一方でギアはローのみ縛りを課すようなもので。
16000回転まで引っ張れる代わりにローギア縛り。
8000回転縛りの代わりに最高6段ギア。
街乗りを考えたらどっちが効率いいかは考えるまでも無いでしょう。
- URL |
- 2016/07/15(金) 05:30:32 |
- 7SUXEN #22s72cIM
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